目的の達成率を測れば、それが「解決率」です。
FAQの運営をされている会社から、そもそもFAQの解決率って何ですか? FAQの解決率はどのように測定するのですか? というご質問を受けます。
これは非常に根本的で重要な質問です。
今さらな質問にも聞こえます。でも例えばセミナーなど大勢の人の集まる場で質問していただいた方には「よくぞ勇気を持って質問してくれた!」と心の中で感謝します。
すこし脱線しますが、多くの日本人にとって質問などを発言すること自体、恥ずかしくて勇気のいることのようです。しかしほとんどの場合質問をすると、周りの人に感謝されます。
さて、FAQの解決率とは何? への答えは逆算的に考えればすぐに分かります。
前提となることをこの連載ブログの第1回目に書きました。(よろしければ読み返していただければと思います。)
仕事には目的、目標があります。特に会社の予算を使って行うことにはすべて「営利」や「費用対効果」という前提目標があります。そこまでは、さすがに言われなくても、って感じですよね?
では、FAQ運営の目的はなにか。
「コールセンターのコストコール(メールやチャットなどの有人対応全般)の数を減らすこと」です。
コストだけの有人対応数を減らすことでそのぶんの利益を残す、あるいは費用対効果を目的としています。
目的のために、ユーザーにFAQで問題解決(完結)してもらう。1人のユーザーがFAQを読んで問題解決できれば、そのユーザー1コール分がコールセンターから減ります。
これを原則としたシナリオが次のとおりです。
1.問い合わせ①が日に100コールありました。
2.問い合わせ①に対応するFAQ①をウェブサイトに掲載しました
3.問合せ①が日に30コールになりました。
このシナリオでは、FAQ①は、問い合わせ①を70コールも減らしたことになりますので、解決率が70%です。
まずこれが解決率に関する基礎的な考え方です。(ミクロ視点)
それは「理屈」であり、現実上はそんなにシンプルではないと、たった今、考えた方もいらっしゃると思います。
例えばコールが減ったのは、たまたま季節的に問い合わせ①に関するニーズが減ったからかもしれない。ほかのページやSNSでの案内も効いているかもしれない。アプリやサービスを更新したからかもしれない等々。
そうかもしれません。
であれば、必要に応じて貴社が想定される「かもしれない」での効果もしっかり測定しておいてください。
その「かもしれない」測定結果を待ちつつ、ここでは一旦「FAQ」での「解決率」の基礎的な考え方を徐々に発展させていきます。
基礎的な考え方ではデイリー(日毎)で測定しますが、これを毎日続け週単位、月単位、四半期単位、半年単位、年単位と分析期間を伸ばしていきます。するとコール問い合わせ①とFAQ①の相互関係が、徐々に平均化されていきます。
基礎的、ミクロに見ていたものを、全体最適にマクロで見ていき、
1日単位のFAQ解決率~1年単位のFAQ解決率と複数の粒度でも解決率を見ます。
ここにも推測される「かもしれない」があれば、同じ期間で測定しておいてください。
少し面倒なことを書いたようですが、要はFAQの解決率とはFAQでコールを何件減らしたかということにつきます。
その際に忘れてはいけないのは「どの問い合わせに対して」なのかという視点です。
その点についてもミクロな視点から分析をしてください。要するにミクロな視点でのコンタクトリーズン分析から。
FAQの解決率については上記である程度説明できたと思います。
次に上記の計算を正確に行う準備と方法が問題になるかと思います。計算式は分かっていても、代入する数値や対象物がなければ計算はできません。
そこでひとつだけ、分かりやすい例を挙げておきます。どの企業にでもありそうな問合せですので、ぜひ実施してみてください。
問い合わせ①「会員サイトに登録しているメールアドレスをスマホから変更したい。詳しい手順を教えて」
FAQ①「Q:会員サイトに登録しているメールアドレスのスマホからの変更手順を教えて」
1.問い合わせ①について、有人対応の問合せ数をカウント(毎日)
2.FAQ①について、ユニークアクセス数をカウント(毎日)
3.1と2の遷移をとる。
もうひとつ「かもしれない」があります。それは、ユーザーはそもそも初めからFAQなんて見ずにコールセンターに電話してきている、かもしれない、と言うことです。それは大いにあり得ます。それがどれくらいの数あるのかを知るためにも、まずは上記基礎的な解析は必要です。
「ユーザーはそもそも初めからFAQなんて見ずにコールセンターに電話してきているかもしれない」について、大問題ですので別の回にまた書きます。