FAQとマニュアルの運営はどう差別化したらいいの?

FAQをコンビニ、マニュアルを卸売市場と考えて運営してください。

コンビニに行ったことがない人は、いないでしょう。
卸売市場(または、問屋さんでもOK)には、行ったことがありますか。
この2つのビジネス運営は、FAQ運営とマニュアル運営に非常に似ているんです。

まず、コンビニと、卸売市場の違いをFAQとマニュアルと対比できるようにまとめてみますね。
観点 コンビニ(FAQ) 卸売市場(マニュアル)
ユーザー目線 日常必要なものはたいてい揃う。欲しいものがすぐ見つかる。滞在は短時間。 ほとんど何でもあるが、広すぎて探しにくい。じっくり物色するので滞在は長時間。
運営目線 一般客を意識して探しやすさ・手軽さ・品揃え・売れ筋を厳密にチェックし、毎日のように棚卸をする。 売り側の事情のため長い歴史に基づいた規則があり、豊富さを重視して厳密に運営。
システム・UX目線 交通・Web・ATM・輸送などと密接につながり、客・運営双方にとってUXの塊。 足とノウハウで利用するイメージが強く、「知る人ぞ知る」的な環境。

FAQはユーザーからの問い合わせが多い要求に対する解決策を提示する場です。(コンビニはそうです)
マニュアルは、もともと企業発信の情報をまとめている、企業ドリブンな場です。(卸売市場はそうです)

コンビニ(FAQ)には、何でもあるわけではないが必需品は買えるし、生活の8割がた事足りるので滞在も短時間ですみます。
なぜならそのようにデザインされ、あらゆるシステムを駆使してマーケット理論で運営されているからです。
もしコンビニが卸売市場のように巨大で、日常品だけではなく、ありとあらゆるものが揃っていたらどうでしょう?水のペットボトル一本探すのにとても時間がかかりそうです。しかも同じようなものが大量にあり、時間をかけて吟味する必要がある。自然滞在時間が延びてしまいます。それではコンビニエンス(便利)とは言えないのではないでしょうか。

ところが、FAQが卸売市場化、つまりマニュアルのようになっている傾向はいろいろな企業で散見されます。企業発信の情報の数々がFAQとして大量に詰め込まれ、探すのがとても大変な状態です。FAQツールやチャットボットを駆使してもたどり着けず、ユーザーはきちんと問題解決できない・・・。
ん? FAQをマニュアルの様にあらゆるものを網羅しておけば完璧だから、お客様が問題解決できないわけはない。したがってコールセンターの電話も減るはずと、いま、思われているでしょう。
でも実際にそうなっていないですよね。大抵の会社は、マニュアルはお客様に提供しているはずです。それで、電話は無くなりましたか?無くなりません。
マニュアルを整備してもコールセンターにはたくさん電話はかかってきます。それはおそらく、
・お客様は目前の問題に対して、マニュアルのどこを見ればいいか分からない。
・マニュアルには「正常系」は書いているが、個別の問題系までは書かれていない。
・そもそもマニュアルは文字が多いし、読むのが大変。(つまりメンドくさい)
からでしょう。

さて、FAQがマニュアル化している現状。それはFAQ運営が「形骸化」してしまっている状態です。
形骸化とは、立派な目的をもって始めた活動なのに、途中から役務だけが残り、目的も効果も見失われた状態です。役務が残っているのならまだしも完全放置状態となれば、形骸化を通り越して、もはや抜け殻化です。
非常に残念ながら多くのFAQがその道をたどっているようです。FAQをやっているつもりだけど、マニュアルとの区別がつかない・・というのはそんな状態が起因しているのかなと思います。

FAQの目的は、コールセンターの電話量を抑制することです。
そのためFAQは、
・お客さま発信のよくあるお問い合わせから準備する。
・全てQ&A形式で見つけやすく、問題解決しやすく取りそろえる。
・リアルタイム且つ精緻にKPIを分析しメンテナンスする。
マニュアルとは全く違ったものであることが分かります。

FAQとマニュアルの運営の違いは伝わったでしょうか。長々と書いてしまいましたが、思い出す際には、それぞれの目的は何?という「目的思考」を思い出すとピンとくると思います。
また悩んだらいちどコンビニと近所の卸売市場か問屋さんに足を運んでみるのもいいでしょう。そういう目線で行ってみると、ちょうどいい気晴らしにもなります。

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