探していたものに間違いないと思わせるQ(質問文)とそれにまっすぐに応えるA(回答文)のペアです。
あるユーザーがあるサービスに対して何か困りごとがありました。
サービス元の会社のFAQで困りごとが自己解決するまでにはいくつかのステップを踏まなければなりません。
1. パソコンやスマホでインターネットに接続する
2. ブラウザを通じてサービス元のFAQサイトに行って検索するか、Googleで検索してFAQまで追跡する。
3. たどり着いた1つのFAQが困りごとへの解決を与えてくれそうかQ(タイトル文)を読んで確かめる
4. Qに確信が持てたら、クリック(やタップ、以下同じ)をしてA(本文)を読む
5. Aの主要部分を最後まで読む。
6. 読んだAの内容を理解し、「これで自分の困りごとは解決できる」とはっきり感じる。
1や2のステップはFAQだけに限ったことではありません。SEOや導線の話なので別の回で書きます。
3~6のステップについて、クローズアップして考えます。
ステップ3~6は一言でまとめると、「読む」という行動につきます。
ただし「読む」という作業は、単純なことではありません。
考えている以上に、繊細かつ複雑な知的プロセスが含まれているのです。
例えば、次の9文字を読んでください。
りんごは赤いですか
声にすると、百人や千人が読んでも同じ聞こえ方になるでしょう。
でも「りんごは赤いですか」が表す意味を、聞いた人が全員、同一の捉え方をするでしょうか。
それは、それは、人によってさまざまな違いが出てくるはずです。
例えば私は、半分に割ったりんごと、丸いままのりんごが並んでいるイメージをしました。皮は赤と緑ですが実は白です。
一言で「読む」といっても個人の捉え方が様々です。すると「りんごは赤いですか」への答も様々になります。
今これを読んでいるあなたはいかがですか。
「読む」という人のプロセスを考えると、①文字を見て追いかけ形状を認識する ②口であるいは心の中で音にする ③意味や文法を把握して理解する ④前後の文脈や背景も捉えて書き手の意図を捉える ⑤書かれていない部分を想像で補う ⑥自分の経験や目の前の現実と比較して意味付けしたり何かに当てめたり・・・等々、とてもに知的な作業をしています。
さて、FAQも読むものです。
もちろんFAQを読むことにも上記のプロセスが伴うし、「困りごとを解決する」という具体的なミッションがあるのですから知的な作業としてはさらに複雑です。
りんごは赤いですか、というたった9文字の読み方(捉え方)がそうであるように、
FAQも、文であるがゆえにいろんなユーザーに千差万別な捉え方をされると考えてください。
冒頭に書いたステップで3~6にはいちいち知的なプロセスが伴います。つまりFAQのQとAを準備する側はこの知的プロセスを分かった上できちんとユーザーがステップ6に帰着できるような書き方をしなければいけないのです。
問題を解決したいのであれば、ユーザーを途中離脱させることは許されないのです。
まずステップ3と4(Q)についてですが、ユーザーが自分の困りごとを解決に導いてくれそうな文だと「確信」を持つこと、とあります。
では、次のようなQで、ユーザーはしっかりとした確信を持てると思いますか。知的プロセスで考えてください。
Q1.パスワードを忘れました。どうすればいいですか。
Q2.返品手数料はかかりますか。
Q3.画面上にメッセージが出て固まった。
Q1~Q3いずれも、「リンゴは赤いですか」同様に、ユーザーによって捉え方が異なってくるはずです。
もしクリックをしてくれるユーザーがいるとしても、「確信は持てないけどたぶんこれかな、間違ったらしかたない・・」と半信半疑かもしれません。
これはつまり、「確信がない」ということです。回答は自分の「期待」通りか不安です。では、なぜ確信が持てないか。次のようなもやもやがつきまとうからです。
Q1.パスワードを忘れました。どうすればいいですか。
どこのパスワード? パスワードを忘れてもなんとかなるの? 解答には何が書かれているの?ともやもや。
Q2.返品手数料はかかりますか。
手数料がいくらなのかもわかるの? 返品する品物の状態は関係ないの? こちら都合だけど・・ともやもや。
Q3.画面上にメッセージが出て固まった。
メッセージって自分が見ているものと同じ? 解決策はわかるの? 固まった、の意味は? ともやもや。
もちろん離脱するユーザーも大勢いると思います。もやもやして手戻りが嫌だからです。これも知的プロセスです。
では、次のように書き直してみましょう。
Q1.マイページのログインパスワードを忘れました。再設定手順を知りたい。
Q2.こちらの都合で返品したい。未開封の場合、返品手数料を知りたい。
Q3.起動直後の画面上に『Errorメモリ不足E013』と表示された。対処手順を知リたい。
格段に具体的で明快になりました。ユーザーのもやもやも激減したのでは。
ユーザーもこれらを読んだら、自分の困りごとと照らし合わせて確信を強められると思います。
知的プロセスをクリアしたからです。
確信とは、単に「これは自分の質問だ!」と感じることに限りません。
「これは違う」と明確に判断できることも、立派な確信です。
なぜなら、次の行動(検索の続行や別チャネルへの移動)にすぐ移れるからです。つまり即座に次の行動に移れることが、「確信」なのです。ユーザーは自信をもってQ をクリックしたり、別の解決策(電話やメール)を判断できたりします。
書き直す前のQが悪いのは、ユーザーがこのような確信が持てないことです。
みなさんは、「文」をチャットやメールで日常茶飯事に書いていますし、ちゃんと書けています。しかし「読み手の立場」で、読み手の知的プロセスを考えてみてください。読み手は自分の意図を100%ちゃんととらえてくれているか不安になりませんか。
・・・私も毎回このブログを書きながらその不安にさいなまれています。