チャットボットはユーザーの問題解決率に有効ですか。

あなたの会社のFAQ運営への向き合い方次第です。

身もふたもない回答ですが・・残念ながら、チャットボット自体はユーザーの問題解決率を担保するものではありません。
チャットボットを導入したとして、今そこにあるFAQをそのまま流し込んだところで大した効果は見込めません。
全く役に立たないか、最悪ユーザー満足度低下の原因になります。
チャットボットに限らず、いかなるWebツールでも、全く同じです。

FAQと言えば、「FAQツール、AIチャットボット、生成AI」で解決できる!と思い込んで求める会社のお話をときどき伺います。
でもすこし立ち止まって考えてください。それらはただの「道具」なのです。世の中の如何なる道具も中身(コンテンツ)と使い方が下手なら結果は悪くなるものです。(のび太の教訓)

道具であるチャットボットも、それだけではユーザーの問題を解決することはできません。そこまではいくらなんでも分かっていると思います。
だから、やっぱり問題解決の鍵となるコンテンツ、ナレッジやFAQを流し込みます。それでなんとなく、それなりに、まあ動いているように見えなくもない、となります。ただしその時点ではまだユーザーに寄り添えるものではありません。ユーザーの「困った」はまだ解消されていないのです。

では、どうするかです。要件定義してみてください。
チャットボットは何のために導入する道具ですか? 
「ユーザーの問題を解決するため」ではないです。(しつこいようですが)
「問題解決できるFAQにユーザーを導くため」です。

チャットボットの特筆すべき特徴は、たとえばLINEっぽい画面で、ユーザーとシステムが「会話」をしながら、問題の解決にたどり着けることです。このユーザーインターフェイスは多くの人にとても親しみがあり、よって、誰でも抵抗なく使えるはずです。その特徴を利用してユーザーを問題解決できるFAQに徐々に導くことができます。

ユーザーをFAQに導く方法は2種類あります。
1. あらかじめ決められたシナリオのステップに沿ってユーザーをFAQに導く
例 「何を知りたい?」→「ATM」→「手数料」・・と順に絞り込む。
2. 生成AIを利用してユーザーの生入力した問合せを理解してFAQに導く
例 「ATMからほかの銀行に振りこんだら、手数料はいくらなの?」→該当のFAQか回答を表示

冒頭で「運営の向き合い方次第」と答えましたが、上記のいずれも上手くユーザーを導くようにチャットボットを動作させるためには、導入するあなたの会社の誰かが準備作業を行う必要があります。1も2もそれなりの量の作業をする必要があり、作業へのその向き合い方次第で、チャットボットがユーザーを上手くFAQへ導けるかどうかが決まってくるのです。(あなたの会社の誰かが作業をしなくてもベンダーが代行してくれる場合もありますがコストはかかります)

ユーザーを導くための準備内容を簡単に説明します。
1. シナリオというのは、ユーザーとチャットボットの間の「やりとり」をあらかじめ綿密に想定して、ユーザーがFAQにたどり着く静的なルートを作るイメージです。シナリオ作りには一定以上のUXセンスと根気強さが必要ですが、ユーザーを知り尽くした専任が適任でしょう。
2. 生成AIを利用するということは、ユーザーからの問いの入力を丸投げして生成AIに最適なFAQまたはFAQと紐づいた回答を探させるイメージです。一見するとほぼAI任せですが、ユーザーは何を入力するか分かりません。想定を基に事前に生成AIの「予習」を人が手伝う“プロンプト“の専門知識が必要です。

チャットボットがユーザーをFAQへ導くための準備のイメージは伝わったでしょうか。このFAQへの導きの準備への向き合い方が運営の向き合い方になります。上記の作業を行ってチャットボットをユーザーに公開することができます。

チャットボットを公開できたからといって決して安心はできません。その後無数のユーザーたちは千差万別。チャットボットに期待してどんな無理難題、文脈の通じない要求、思い込みを問合せてくるかわかりません。リテラシーも怪しいユーザーによってチャットボットが世の中の変な風にさらされ、炎上か暴走の道をたどらないように支えるのはFAQ運営者です。チャットボット公開後こそ運営者の本領発揮。公開前以上にシナリオや学習作業の調整に余念なく向う必要があります。

このようにチャットボット運営に真摯に向き合い、多くのユーザーを、求めるFAQに導くことがほぼできるようになって、初めてチャットボットはユーザーの問題解決率に貢献できる素晴らしいツールになります。チャットボットは「おしゃべり」という非常にユーザーフレンドリなインターフェイスゆえに、導入後は客の無謀な期待と会社の多大な期待を背負うことになります。それを支えるのはチャットボットではなく運営者です。無論大前提として、チャットボットの性能に関わらずFAQコンテンツ自体のクオリティが高いことが重要です。

「チャットボットはユーザーの問題解決率に有効ですか」の回答が、「あなたの会社の運営の向き合い方次第」というのはそういったことです。

FAQ運営者がそこまでがんばらなくても賢そうな生成AIが何とかしてくれるのでは?・・・そう考える人も、もしかしたらいるかもしれません。
でもそうでしょうか? 今後も生成AIは機能向上するかもしれませんが、ユーザーである人や、社会のサービスも一秒たりとも変化を停めません。つまり想定されるシナリオや学習しなければならない困りごとも、問題も、言葉の表現自体もめまぐるしく変化していくのです。しかもそのバリエーションは会社の数だけユーザーの数だけ存在する。その変化に「AIがなんとかしてくれる」という受け身な姿勢でついていけるでしょうか。

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